一番恐ろしいのは パート2

みなさん、ご訪問ありがとうございます。

昨日の続きです。

歌舞伎役者・中村仲蔵。

梨園の血をひかない仲蔵が、
歌舞伎界での最下級「稲荷町」から
異例の「名題」出世へと至ります。

血筋を重んじる歌舞伎の世界にあっては、
仲蔵の昇進は羨望と嫉妬の標的に遭います。

仲蔵が「名題」に昇進して初めての演目が
「仮名手本忠臣蔵」

仲蔵に割り当てられた配役は、
「相中」が演じてもおかしくないくらいの地味な登場人物・斧定九朗。

しかも斧定九朗は、登場後、ほどなくして
イノシシと間違われて猟師に鉄砲で撃ち殺される間抜けな存在。

仲蔵に配されるのはこの斧定九朗一役のみ。
「名題」が斧定九朗を演じるのはおろか、一役のみと言うのも
信じられないことです。

つまり仲蔵の「名題」昇進を快く思わない
座の者の嫌がらせなのです。

陰湿な嫌がらせに、逆に火がつく仲蔵。
「それならば、今まで誰も演じたことのない斧定九朗を演じてやる!」

仲蔵の挑戦が始まります。

仲蔵が演じた以前の斧定九朗のいでたちは、
どてら、丸ごけの帯、腰の刀は山刀、山岡頭巾を被っているので、
顔すらはっきり分からない姿。

しかも人を殺して追いはぎをした後に、イノシシと間違われて撃ち殺される。
どうみても、もっさいいなかっぺの姿をした、間抜けな存在です。

どこに見せ場などあるのでしょうか?

仲蔵は頭を抱えます。
何をどうすれば、世間をあっと言わせる斧定九朗になるのだろうか?

アイデアは浮かばず、すがるのはもはや神頼み。
柳島の妙見様に日参で願掛けをします。

来る日も来る日も神頼みをする仲蔵ですが、
どうやっても解決の糸口が見えず、
「仮名手本忠臣蔵」の上演初日が迫ってきます。

光明を見いだせず、まったくの五里霧中に陥った仲蔵。
この日も妙見様に行きますが、帰りにだしぬけの雨に遭い、
近くの蕎麦屋で雨宿りをすることに。

ただ雨宿りするだけでは店に申し訳ない、と蕎麦を注文する仲蔵。
蕎麦が出来るのを待っている仲蔵。
そこへ雨に濡れた浪人が店の中へと入ってきます。

浪人のいでたちを見た仲蔵、はっとします。

月代(さかやき:おでこの部分)を伸ばし、黒羽二重の単衣(ひとえ)、茶献上の帯、
茶の鼻緒の雪駄を腰へはさんで、尻をはしょり、朱鞘の大小。

破れた蛇の目の傘を放り出し、
月代をぐっと手で押さえると、雨に濡れたしずくが流れる。

店に入ってきた浪人は、
仲蔵が求めていた斧定九朗の姿そのものだったのです。
これだ!これだ!斧定九朗はこうでなければいけないんだ!

斧定九朗は浪人の身ながら、父親は禄を貰っていた、謂わばボンボン。

金持ちだった息子が、落ちぶれたとはいえ
山賊のようなもっさい格好をする訳がない。
斧定九朗は粋でなければいけないんだ!
仲蔵の頭の中で、新しい斧定九朗像が浮かび上がります。


そして「仮名手本忠臣蔵」上演初日。
仲蔵は、決死の覚悟でこの日を迎えます。

今までとは全く違う斧定九朗を演じようとしているのですから、
会場の客に受けるかどうかなど、全く未知の世界。

仲蔵は家を出るときに妻に、
「もし、今日演じる斧定九朗が客受けせず、失敗したら当分江戸を離れる」
と言い、家を後にします。

失敗したら恥ずかしくて江戸の町を歩けない。

上方へ行く覚悟、そして自ら命を絶つ覚悟すら秘めての
仲蔵の上演初日が始まります。


また長くなったので、次回続く。







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