一番恐ろしいのは パート3

みなさん、ご訪問ありがとうございます。

立川志の輔さんの落語「中村仲蔵」の続きです。
長くなりましたが、これで完結です

「一番恐ろしいのは 1/3」
http://1192-296.at.webry.info/201206/article_16.html

「一番恐ろしいのは 2/3」
http://1192-296.at.webry.info/201206/article_17.html


門閥外の中村仲蔵が異例の「名題」昇進を遂げますが、
仲蔵の出世を快く思わない周囲の嫌がらせに遭い、
かれは次の演目「仮名手本忠臣蔵」で
地味な役である斧定九朗一役のみの仕打ちを受けます。


陰湿ないじめにも逆に発奮する仲蔵。

地味な斧定九朗を一新するアイデアを練ります。

そして迎えた演目初日。

仲蔵はこの演技がしくじれば江戸を離れる、
と悲壮な決意で舞台に挑みます。

いよいよ仲蔵の出番が来る5段目。

「仮名手本忠臣蔵」の5段目とは、
話の骨休め的な存在であり、
さしたる展開もないので、観客もここぞとばかりに弁当を食べ
ながら見をするような場面。

気迫十分な仲蔵、新たな斧定九朗を引っさげて花道に登場します。

花道に現れたのは、
以前から演じられた山賊姿の無粋な斧定九朗ではなかった。

全身白塗りを施し、髪は五分月代。
黒羽二重の単衣(ひとえ)に見映えのする白献上の帯。
朱鞘の大小を差し、腕をまくって尻からげ。

更に舞台そでの水桶に突っ込んでいた傘を手に舞台に上がる仲蔵。

舞台上でおもむろに傘を開く。
水しぶきが観客席に飛散する。

ここぞとばかりに見得を切る仲蔵。

どうだ!歓声を上げろ!



しかし、会場は水を打ったような静けさ。
観客からの
「栄屋!」
の掛け声もない。

しくじった!

仲蔵、愕然とします。
新たな斧定九朗を演じることで、会場意表を突き、
拍手、歓声の渦が起きると思っていたのに、
何も反応がない。

しかしまだ見せ場はある。

気持ちを保ち、演技を続ける仲蔵。

闇夜の街道で人を殺し、金を盗む斧定九朗演じる仲蔵。

いよいよ鉄砲で撃ち殺される段に入ります。

ここでも仲蔵は、新たな趣向を考えていました。

うずらの卵に小さい穴を開け、中身を取りだし、
代わりに溶かした紅を殻に注ぎます。

斧定九朗が鉄砲で撃ち殺される場面が近付くと、
密かに紅入りのうずら卵を口に含みます。

そして鉄砲が放たれ、斧定九朗に命中します。

頃やよし、と仲蔵は口の中の卵を食い破る。
紅が口の中に溢れ、それがポタポタと口から滴り落ちる。
これも仲蔵の新たな試みです。

観客は口から血を流していると思うに違いない。

しかも仲蔵が体を白塗りにしたのは、
紅の血が鮮やかに映える為の演出。

さぁ、これでどうだ!

仲蔵は観客の反響を待ちます。

しかし、




静寂。




会場は水を打った静けさ。
仲蔵が決死の覚悟で挑んだ、新生・斧定九朗に対して、
会場からは何も反応が返ってこないまま、
仲蔵の出番が終わりました。


失意の仲蔵。
家に戻り、上方行きの準備をします。

もう役者として生きていけない。
仲蔵は上方へ行き、死ぬ決意すらします。






・・・とまぁ、
「これって落語でしょ?」
「笑って終われるよね?」
と心配するような展開で、聞いていても
「どんな結末なのか」
「いや、もうずっと聞いていたい」
と思った見事な落語でした。

立川志の輔さん、素晴らしい落語をありがとうございました。

最後の結末は秘密にしておきます。

そして、タイトルにある
「一番恐ろしいのは」
なんですが、私がこの演目で一番印象に残った場面のことです。

仲蔵が「稲荷町」で端役として舞台に出ていたとある日、
初めてセリフ付きの役をもらいます。

花道の端に伏し、壇上にいる中村伝九朗(市川団十郎だったかも…)
に向かって、
「○○様のお越しでございます」
と言上する役をもらいます。

セリフの「○○」は演目によって名前が変わる。
仲蔵は来る日も来る日も愚直に、一言だけの役をこなしていきます。


そしてある日。
いつものようにセリフを言おうとする仲蔵。

しかし、「○○」にあたる名前を忘れてしまいます。

なかなかセリフを言わない仲蔵。
最初は間をとっていると思っていた観客も、それにしては長いと
不審に思い始めます。

セリフを忘れたな、と感づいた師匠の伝九朗。
助け舟を出そうとしたところで、おもむろに仲蔵が
花道を渡り、師匠の傍まで近寄り、耳打ちで
言上した体を作ってこの危機を乗り越えます。

どうにかアドリブで演目の進行を止めなくて済んだ仲蔵。

しかし、終演後に仲蔵は伝九朗に呼ばれます。
仲蔵は、これで自分はクビになると覚悟を決めます。

仲蔵の心配は杞憂でした。
伝九朗は仲蔵をクビにはしませんでした。
とっさのアドリブに感心もした様子。

しかし伝九朗、ここで仲蔵が「名題」へ大出世する
きっかけをつくる説教をします。

かなり印象深かったので紹介します。



   いいかい、芸事で一番恐ろしいのは「飽き」だ。



メモしてなかったので正確ではないですが、こんな感じのセリフだった筈です。

今日も長くなりましたが、
最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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