数学史300年の謎を解け


「私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、
余白が狭すぎるのでここに記すことはできない」


ある本の余白に残された意味深なメッセージが
300年にも及ぶ波乱万丈の数学ドラマになろうとは
誰が想像できたでしょうか。


ピュタゴラスの定理として有名な

Ⅹ²+Y²=Z²

Xの2乗とYの2乗の和はZの2乗になる。


このピュタゴラスの定理に少し手を加えることで
なんとも難解な定理を作り出したのが
フランス人で数学愛好家のピエール・ド・フェルマー。


後に彼の名を冠した「フェルマーの最終定理」がこれ。


3 以上の自然数n について、

X^n +Y^n =Z^n となる 0 でない自然数 (x, y, z) の組が存在しない。



つまりピュタゴラスの定理

Ⅹ²+Y²=Z²

は定理として成り立つが、

Ⅹ³+Y³=Z³




Ⅹ⁴+Y⁴=Z⁴


など、べき数3以上でこの数式は成り立たない、
そんな自然数は存在しない、とフェルマーは言っているのです。


言われてみればそんな気もするが、成立しない事を証明するのが難解。


自然数は無限に存在するので、
定理として成立出来ない事をどのように証明していくのか?

そして挑発するかのように当の本人であるフェルマーは

「俺は証明できるけど教えてあげない」

と前述の
「余白が狭すぎるのでここに記すことはできない」
などとフェルマーの癖とも言うべきか、問題を提起しておいて解法を記さず、
途中までのヒントを本の余白に書いて以来
300年以上証明できない数学史の難問とされてきました。


それでも世界の数学者はこの独学の数学愛好家、フェルマーの問題に立ち向かいます。

過労とストレスで失明しながらも、レオンハルト・オイラーは

Ⅹ³+Y³=Z³

が成立しない事を証明し、

女性であるがゆえの差別と偏見の時代に生きながらも、
男と偽り数学を学んだソフィー・ジェルマンは

2p+1の性質をもつ素数pにおいて

X^n +Y^n = Z^n

は成立しない事を証明しました。


フランスが生んだもっとも知性ある女性と称賛されながらも、
時代が彼女を抹殺しようとしていた事実に、
性差別の苛烈さを垣間見ます。


フェルマーの死後も遅々として進まぬ解明作業は、
時代を越え、国境を越え、沢山の人々の人生に影響を与えていきます。


ドイツ人資本家、パウル・ヴォルフスケールは
この難問を知ることで自殺を思い留まり、
解読不可能と言われていたエニグマ暗号を解読した
アラン・チューリングが開発したコンピューター(の元祖)で
無限に存在するフェルマーの定理を力技で解明しようと試みたり。



そして、20世紀のイギリスでついに
町の図書館でフェルマーの存在を知った少年が表舞台に登場します。


彼の名はアンドリュー・ワイルズ。


アンドリュー・ワイルズは、フェルマーの最終定理の解明に
二人の日本人が提起した予想を解明すれば、
自ずとフェルマーの定理も解明できるのではないかと気付きます。


その二人の日本人とは谷山豊と志村五郎。


フェルマーの最終定理を解く鍵となったのが二人の名を冠した


「谷山=志村予想」。


そして、全く違う観点から証明を試みた宮岡洋一。


17世紀に始まった数学史の難問を解明するのに
3人の日本人が多大な貢献をしていた事には驚くばかりです。


この本の凄いところは、詳細な数学の知識を理解できなくても、
中学生レベルの数学知識があれば大局的に理解できるところです。


そして、解明にあたった人々の人間ドラマが秀逸で、
読んでいて飽きないどころか、ミステリー小説を読むようなスリル感があり、
名著と言って過言ではないでしょう。



1993年6月23日、ケンブリッジ。
ケンブリッジ大学の講堂で
フェルマーの最終定理の証明を講演したアンドリュー・ワイルズは、
3世紀にも続いた謎の解明をやり遂げた英雄となります。


・・・かに見られたのですが、後に彼の証明に欠陥があることが判明します。

果たしてアンドリュー・ワイルズは欠陥の修正に成功するのか?

それとも謎は更に時を刻むことになるのか?




結末は・・・余白が狭すぎるのでここに記すことはできない。







本日のレビューはサイモン・シン著「フェルマーの最終定理」でした。



フェルマーの最終定理 (新潮文庫)
新潮社
サイモン シン

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by フェルマーの最終定理 (新潮文庫) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのトラックバック