バガボンド36巻 「更に凄みを増した36巻」

みなさん、ご訪問ありがとうございます。

「バガボンド」36巻のレビューです。


吉岡衆との死闘をピークに、剣劇での盛りあがり場が少ないまま
巻は36巻まで来ましたが、
それでも飽きさせない作者・井上さんの力量に脱帽です。


漂泊の果てに辿り着いた寒村に定住する武蔵が、
米の育たない荒野を格闘しながら開墾していきます。

大雨が降れば開墾地が水でさらわれ、
ようやく作物が実ったかと思えば、
飛蝗の害で収穫は全滅になり、
己が力を振り絞って自然災害に抗い、
生きる糧を育もうとするも、
天は武蔵に試練を与えていきます。


「バガボンド」の読者によっては、展開が間延びになって
早く佐々木小次郎との決闘を書いてくれ、
と思う人もいるでしょうが、小次郎と


「闘えば負ける」

と呟いた武蔵が巌流島に至るまでの過程において、
死闘につぐ死闘を経験しても、
まだ小次郎を凌ぐことが出来ていない。


だからこそ、自然と死の試練を受ける開墾の章を描くことは
避けて通れないものだと思います。


36巻では、斬り合いによる格闘は描かれていません。

しかし、思うようにいかない土とのせめぎ合いは、
剣で斬る者の気迫、
超えられない相手と悟っても前に出る者の覚悟、
斬られる者の痛み、怒り、悲しみ、死…。

剣での斬り合いとはまた違う凄味が表現できていて、
見事な巻だと思います。

特に凄いと思ったのが、微妙な変化を感じ取る表現です。

作物の育たない土が、人の手を借りながら開墾していく内に
土の質が変化していく様。


そして、34巻以降、やはり絵のタッチが微妙に変わっていると思います。

絵を描くツールは筆のままかもしれませんが、
描き方を変えているのか、飢饉に苦しむ村人たちの姿を描く線は、
今までになく粗雑で荒々しいです。

武蔵の髪型も、後頭部で結わえていたのが、
吉岡衆との決着後は下ろしたままになり、
そして今は頭頂部で髪をくくる茶筅結いになっています。


タイトルロゴのフォントも34巻から変わっているので、
もしかしたら井上さんは、どこかしかの変換期と感じたタイミングで
意図的に絵や髪型を変化させているのかな?
と推測したりしてます。

「バガボンド」の最終巻は何巻で、
どのような終わり方になるのかは分かりません。

私の予想では40巻を越えるのでは?と思ってますが、
どんどん内容が濃密になっていくので、全く飽きません。


食料も僅かになり、ボロボロになりながら武蔵は自問します。


死ぬことは避けて通れない運命。

しかし、死ぬまでに残された時間はある。

残された時間で何をして、自身はどうありたいのか?

問いかけに答えを導き、行動に出る武蔵はまた一つ
大きな壁を越えて強くなろうとしています。

敵を倒し、次に更に強い敵が現れ、また倒し、
そしてまた強敵が現れる・・・。

そんな通り一辺倒な活劇は「バガボンド」に求めていません。


剣の話から大きく逸れても構わない、と思えるほどに
凄味を感じる36巻です。

これは買い!です。








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